本日を持って、2020年が最後の時間を迎えます。
コロナ禍に奔走された1年でしたが、飲食業界にとっては明暗がはっきりと分かれた
1年となりました。
外食産業にとっては、営業自粛、外出自粛にともなう来店客数の絶対的減少からの
売上減、ピーク時の売上の蒸発と、ウィズコロナ禍におけるソーシャルディスタンスは、
可能な限り席数を詰め込んで、坪当たり売上の上昇を目指すビジネスモデルの崩壊と
なりました。
帝国データバンクの調査では、飲食店の倒産が2020年1-11月で736件に達した。これまで通年(1-12月)で最多だった昨年の732件を抜き、11月時点で過去最多となることが確定した。
帝国データバンク 2020年12月3日プレスリリースより
とはいえ、人間は食べて生きていかねばならず、1日の胃袋は、外食から家食へと
向かい、全体の外食不況感の中においても、絶好調を続ける企業も存在したのでした。
ケンタッキーフライドチキン (2020年4月~11月)
KFCプレスリリース 2020年12月2日より
前年売上高比114.2%、既存店売上高比117.3%、客単価112.2%
忘年会がなくなり、新年会も自粛となり、このまま卒業シーズンや新入学・新社会人のお祝いも
きっとこのまま蒸発していくことでしょう。いずれくると思っていた業態転換のときが
いまやってきたに過ぎないとすれば、これは「不運」でもなく「必然」かもしれないのです。
働き方や生活がガラリとシフトしたのもこのコロナ禍ゆえでした。
春の緊急事態宣言以後の働き方は、会社へ通勤することの義務化から、
オフピークや密集を避けるため、テレワークが進み、会社との接点のあり方を
変えるきっかけとなりました。
在宅勤務の頻度 出社とのミックス型は7割、フル在宅の人は3割
2020年10月時点の在宅勤務の頻度は「週に1~2日」が4割、「週に3~4日」が3割と、在宅勤務と出社を組み合わせている人が多い結果となりました
サイボウズ「在宅勤務者3,000人に聞く「テレワークのコミュニケーション」調査」2020年11月17日発表より
この流れは止めることなく、企業が事業推進をしていく上での
を後押しすることとなり、企業によってはオフィススペースの減少、返還、削減へと
舵を切るきっかけとなるのでした。
あわせて、自宅での仕事をすすめる中で、子育てとの両立や家族との時間
自分自身の趣味やスキルアップなど、働き方▶生き方への興味関心の主軸が変わり
ワークライフバランスが他人事でなくなったのも、このコロナ禍ゆえの現象と
いえるでしょう。
場所が問われない一方で、仕事と生活と遊びの切り替えを自己管理しなければ
なりません。
複数人や集団での「飲み会」が減る一方、
これからは「オン▶オフ」や「オフ▶オン」への時間つなぐ役割となる飲食や、
積極的な遊びやリラックスを求める安らぎをもたらす「オアシス」となる存在の空間やコミュニティ
と食との関係も求められていくことでしょう。食は「おいしさ」そのものを目的とした
存在から、「生き方」に伴走したり、華を添えたりする手段として、役割が変わっていくに
違いありません。
2021年の食を考えていくうえで、バッサリと切り捨てなければならない価値は
次の2つに集約されます。
もはやおいしさを確認するために時間とお金を使っている余裕はありません。
見た目においしい、おいしいことを聞いている、といった「食事前」に
商品や料理、店舗の良し悪しが決まる時代となることでしょう。
結果として、「おいしさの言語化」はますます重要な時代となってきます。
また、「おいしい」から売れるはずという奢りも、もう通用しません。
食との出会い、タイミング、人とのつながりを作るきっかけなど、食が果たす役割は
「おいしさ」以上に他の要素が大きくなりつつあります。
「おいしさ」は主従のうち「従」の存在であり、そこに力を入れることよりも
もっとやるべきことがあります。それが「関係性」です。
「あなたとわたし」「わたしと友人」「ワタシと趣味」など、多様なコミュニティや人間関係
に置いて、食が果たす役割は無限大です。国や言語さえ超える「食」がつなぐ関係性に
気がついたとき、どのように商品開発がなされるべきか、答えは見えてくるはずです。
2021年がL字型の売上のまま、低迷を続けるか。
様々な人とコトにつながって、アメーバのように人気と売上が増幅していくか。
それは、時代の捉え方一つで大きく分かれていくことでしょう。
もはや「市場」で世の中を見ていくことの限界さえ感じます。
「人との関係性」にこそ、大きなヒントがあるのです。