2021年の消費を極める

繁華街で閉店した店舗

 度重なる緊急事態宣言や、まん延防止措置に、消費者である国民も疲弊と悲壮感漂う状況となってきました。いよいよ65歳以上のワクチン摂取が進む状況になっていますが、国民全体の消費が再起、上昇に転じるのはいつになるのでしょうか。

コロナバブルから引き締めへ

 外出自粛、営業自粛の影響から、外食産業は壊滅的な状況となった2020年。当初はただ時をすぎるのを待つだけでしたが、テイクアウトやデリバリーの充実、転換が進み、一部業界や店舗では、時代に即した食の提供で、回復基調。昨対比や過去最高売上を記録する企業も出てきています。

 とはいっても、2020年の家計消費を振り返ってみると、外食に代替する過程の生鮮品目も、2021年に入ってから潮目が変わり、この3月からは転換点を迎えるような感じさえ伺えます。

 下記グラフは、総務省家計調査「消費支出(月次)」を2020年度と2019年度で前年同月比を比較し、グラフ化したものです。

このグラフを見ると、

  • 生鮮肉、魚介、野菜ともに前年同月比超えが続いているが、年明けから低下傾向にトレンドが変化
  • 外食産業は厳しい1年だったが、復調の兆し
  • このまま「家食」がどこまで残るか、変わるか、続くのか?

昨対比を通年で上回っていた生鮮品も、低下傾向。実際店舗を見ても外食産業への行き場を失った生鮮品が溢れんばかりの売り場を形成し、A品が産地競合を起こし、値下げへ。加えてこの5月からは産地においても出荷制限がかかるなど、生鮮品はこれから厳しい1年を迎えることになるかもしれません。

 加えて、春先からの最低気温を含めた霜被害により、果樹系は生育に大きな影響を与え、不作が予想されています。このような供給過多に加え、天候被害による不作など、価格を乱高下させる要因が重なり、2021年の市場流通は需給のタイミングによって、価格形成を大きく歪めることにもなりかねません。

食の外部化率は上昇するか?

 外食ができず、強制的に自宅などで「家食」を強いられた環境では、自炊やテイクアウトによる食事機会は大きく増えました。その結果、生鮮肉で焼き肉をしたり、鮮魚を購入して家でさばいたり、そんな家庭でも「よりおいしく」食を満たそうとする意欲が垣間見えましたが、自粛疲れや外食への復調が見られるようになってきました。

 家でいくらおいしい食事にしようとしても、調理技術や喫食環境など外食にしかできなかった「おいしさの要素」に改めて消費者が気づいた1年であったかもしれません。それは、沖縄で飲んだビールがおいしかったものを、東京にお取り寄せやお土産で飲んでも、同じ感動や雰囲気を味わえないのと同じようなもの。一時的な「家食」への関心は高まりましたが、「外食の楽しさ、おいしさ」もまた学んだ1年でもありました。

令和元年度▶食の外部化率(※):43.1%、外食率:33.7%
[出典:公益財団法人 食の安心安全財団]

 世帯人数もお一人様、二人世帯が多数派を占める現在では、食生活の効率化、コスパは消費選択の重要な要素の1つ。今後、外出が可能になったり、テイクアウトの選択肢が増えていくにつれ、「食の外部化率(※)」は今まで以上に上昇する可能性はあるかもしれません。

 それには、次のいくつかの要因が想定されることでしょう。

  • ”抑圧からの開放”という心理的な繁華街への人流増加・復活
  • テイクアウト食品の多様化、低価格化
  • 惣菜購入と店内飲食の混色、マーブル模様化(ただし、消費税適用の課題有)
  • 特例運用中の路上店舗営業の恒常化

 いずれによいても、好きなときに、好きなものを、好きな量だけ食べられる。そんなチョイス型のフード提供形態の拡充が、これまで3割にとどまっていた外食率の向上と、朝食の取り込み、夕食の外部化誘導を加速させ、現代の世帯構成に食した食生活の変化をもたらすことでしょう。無論、その際には、「1日3食」といった時間的インセンティブによる食事の規定は崩壊し、タイミングやスペースを共有する人や空間で食欲を誘発するシーンは拡大してくことでしょう。

 したがって「小サイズ化」「携帯性」「環境配慮型使い捨て容器」の3つがこれらの動きを後押しすることになるため、脱プラスチックやサービス主体の飲食ビジネス(着席・配膳形式)からの脱却がこれらの成長分野の流れに乗る要件となっていくでしょう。

 一人ひとりのきめ細やかなオーセンティックな食は、一部に限られ、より高級化に向かう中で、洗練された食材と顧客を引きつける一方、安くて易い食が裾野を広げていく、分散の大きい食産業の姿が、これからの「日本食」を形成していく有り様かもしれません。

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